中流階級は空を飛ぶ夢を見るか – Joseph O’Neill’s “The Flier”

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突然空を飛べるようになった男。自分でもその能力を持て余す中、妻の友人に打ち明けることにするが…。

ニューヨークとスカイスクレイパー、無色のオフィス、生命力に今ひとつ欠ける中流階級…といった要素が散りばめられ、現代アメリカエコノミーを生きるニヒリスティックな中年という世代イメージが示唆されている。が、どうもひとつの短編小説として出来が良くない。全体につながっている感が弱く、読み応えが薄い。文体もあまり好みのタイプではない。

超能力を得つつも実際には何の力も手にしておらず、孤独さえ感じる主人公のキャラクターにはザムザを見るのがひとつの正当な見方だろうけれど、それよりはインポテントな男、として読んだほうがしっくりくるかなと思う。妻との関係はあっさり気味(主人公は病を患っているから当然だが)、登場するふたりの友人も、実はレズビアンの関係にあることが判明する。同僚のやや際どい会話にも入っていけない。主人公は地味に疎外されている。しかし友人の危機の最中、彼は突然、啓示めいたものに襲われる。

As I was deliberating, as I was trying to determine exactly how an uninsured aerial intervention would help matters, I was blindsided by a feeling that I can describe only as a powerful sense of arrival—as if all my life I had been trekking, in a series of unconscious gradations and unconscious turns, on an imperceptible road that finally, at this exact moment, had delivered me to a new place and a new dimension of action.

端的に言えばこれは勃起の予感であり、ここで、空を飛ぶということが性的なエスカレーション(への展望)を含有していたことに気付かされるのだが、結局彼が力を発揮して友人を助けるという展開にはならず(肝心のところはやはり女性の登場人物によって執り行われる)、勃起不全のまま物語は終わる。女性によってあらかじめ阻まれる中年男性の勃起。と言ってみたところで、このイシューが突き詰められているわけでもないので、結局あまり面白くはないのだった。この手の話ならもっとユーモアがほしいなぁ。ユーモアは大事だ。