そのほか読んだもの 01

望月優大『ふたつの日本』

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書)

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書)

  • 作者:望月 優大
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/03/13
  • メディア: 新書

「いわゆる単純労働者」や「技術実習生」といった脱臭された言葉の裏に生きる具体的なひとりひとりの”外国人”に対する実感を、豊富なデータを引用しつつ読者の中に少しでも残そうという著者の熱意が伝わってくる。その気持ちに胸打たれる。
ただ読んでみて、読書前の期待がどこか満たされなかったという感じがあって、それはこの本が、現状の紹介・分析というところにとどまっているせいかなぁと思う。
政府が多くの外国人労働者を、日本人非正規労働者と同様「短期で入れ替え可能な労働市場のバッファ」として見ている―端的に言えば、移民国家・日本の問題というのは、私たち自身の内にある外国人差別と非正規差別、この2つが重なり合う領域に目立って現れているということだと思う。ではこれらの差別意識に、私たちはどう向き合えばいいのか? また、この問題と重なり合うように進行している企業・国の「個人からの撤退」という現象は一体何なのか? などなど、提起されている問題はとても大事なものばかりだから、もう少し軽率に踏み込んでもらってもよかったのになぁ、と思った。

直接の言及はなかったように思うけれど、やっぱりハイエクをちゃんと読まないとという気にはなった。ジグムント・バウマンの本にも興味あり。


石井睦美『愛しいひとにさよならを言う』

愛しいひとにさよならを言う (中公文庫)

愛しいひとにさよならを言う (中公文庫)

  • 作者:石井 睦美
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: 文庫

なんとなく手にとった文庫なのだけれど、読後感はかなり悪かった。前半と後半でぜんぜん違う話になっていて、統一感があまりにもない。制作プロセスに何か異常事態でもあったのか、と気になってしまうくらい。そして作中の事件が安易すぎる。母娘関係が一つの大きなイシューであることはわかるが、この書き方ではただ「書いた」というだけで何も残らない。帯に書評家の推薦コメントが入っていることは読み終わってから気づいた(書評家の名前を帯に入れている本は買わないことにしていたのに)。
前半は明らかにシスターフッドの話だ。シスターフッドがひとりのシングルマザーを救い、幼きこどもも救った。でも、主人公であるこどもがつらいときに、肝心の女性たちはまったく役に立たず、なぜかぽっと出のこの男がすべてを受け入れる神として降臨し、そして去っていく。可能性に溢れたシスターフッドを、納得のいく理由もなしに、機能しない関係性としてフェードアウトさせるというこの物語展開を、僕は好まないし、評価もできない。


Joyce Carol Oates’ Big Mouth & Ugly Girl

Big Mouth & Ugly Girl (English Edition)

Big Mouth & Ugly Girl (English Edition)

  • 作者:Joyce Carol Oates
  • 出版社/メーカー: HarperTeen
  • 発売日: 2009/10/13
  • メディア: Kindle版

これぞYA、という感じの、ダブル主人公の超王道学園物語。こんなのさらっと描かれたら、ふつうのYA作家では太刀打ちできない。そういう意味で残酷な一冊だとは思う。最後の締め方に、なんとなくオーツの癖を感じたが(引っかかる人がいなくはないポイントだろう)。最終章を除けば、無駄な文章はひとつもないと言っていい。
もう少し、日本で入手しやすく流通してもいいのにと思うなぁ。河出とかで文庫に入れたらいいんじゃないでしょうか。ついでにオーツの他のも出したら。